ここで紹介するボトルの撮影方法は、切り抜き写真と背景を生かした角版写真の両方で使えるようにする方法で、比較的小さく扱う場合や、予算のあまりとれないチラシや飲食店の小規模なメニューなどに適しています。
とはいえ、ある程度見栄えもすると思うので、時短や、似たようなカットを量産するときの参考になればうれしいです。
用意するもの
レンズ付きのコニカルスヌートは最近買ったばっかりだったので試しに使ってみた程度のものでわざわざ使わなくても、白レフを入れたりラベルは別撮りして後で合成しても全然大丈夫です。
今回はモノブロックタイプのLEDを3灯使います。まず揃えてほしいのが、大きめのステンレス板(45センチ✕90センチ)です。これが今回の撮影のキモになります(ホームセンターで3000円くらい)。
先日購入したレンズ付きのコニカルスヌートも使ってみることにしました。その他、光の漏れや、瓶のガラス面の映り込みを抑える大きめのボード(黒が良い)を用意してください。
いつものパイプディフューザーと折りたたみ式のソフトボックスなども使いますがソフトボックスがなければトレペ直付けでディフューズでもいいと思います。パイプディフューザーを垂らすスタンド類がないときはは前に記事にしたスタンド無しでディフューザーを使う方法を参考にしてもらえるとうれしいです。
基本のセッティングはトレペのディフューザー2枚とステンレス板
大ざっぱに言うと基本セッティングはメインライトとバックからの透過用のライト、天板にステンレス板を使いボトルのミラー反転の映り込みを利用して撮影するということになります。
今回はコニカルスヌートをつかってラベルやキャップの右側の影を明るく起こしましたが、大きめのレフを使ったり、ラベルなどは別撮りして後で合成してもいいと思います。そうするとLEDライトは2灯で済みます。
ワインボトルがステンレス板に鏡のように映っているのがわかると思います。手前のライトにスヌートをとりつけ、少しボカシ気味にキャップとラベルの右サイドに当てています。メインライトのトレペの縁をグラデーションを作って落とすのもポイント
ボトルの斜め後ろのあたりの背景を自然に暗く落とすとうまくいきやすい。
背景から透過光を当てる撮影の場合、ボトルの側面のあたりに不自然なラインができて見栄えを悪くすることがよくあります。
これは、ボトルの斜め後ろあたりに光が漏れていたり、スタンドのシルエットが写り込んだり屈折して光っている、メインのライトがボトルの内側に反射しているなどが原因だと思います。
完璧を目指すとかなり厄介なので、ここではできるだけ両サイドの背景エリアを自然に暗く落とす意識を持つだけでもボトルに自然なグラデーションができて、すっきりした写真に仕上がります。
拡大してよく見ると背景のサイド部分からもれた光のせいで、うっすらとラインが出ていますが、ここは割り切ります。スヌートの光源もボトルに小さく光っていますが、このくらいならカンタンにレタッチできます。
セッティングはそのままで商品さし替えで撮れる
一番大きいボトルでライティングを決めておけば、同じ位置に商品をセットしてカットを量産できます。透過光を入れているので色付きの瓶や中身に色が着いた商品も無難に撮っていけます。
ワインボトルの他に試しにラベルがフィルムで透明のペットボトルも撮ってみましたがなんとか行けそうな感じです。
セッティングをいじらずにこれだけ撮れたらよし、ということにします。(ペットボトルにはレフを入れると更によし)
ステンレス板を使ういくつかのメリットについて
よくボトルなどを正面から撮った商品の切り抜き写真をフォトショップなどでミラー反転させて合成して写り込んでいるような処理をしたものを見かけますよね。最初はそういうカットを一発で撮りたいというのがきっかけでした。
始めた頃は、鏡やガラス板でやっていたんですがよく見ると2重に写ってしまいます(試してみるとわかります)。その後黒や白のアクリル板、アルミの板、100円ショップの台所用のレンジの仕切りなど、色々試してみましたが今のところステンレス板が一番使い勝手がいいみたいです。
メリットその1:角版と切り抜き両方で使える
話が脱線しました。メリット1は切り抜きと角版写真のどちらでも使えるので便利なことです。ただし、切り抜き写真はポスターのように大きく扱うのはやめておいたほうがいいかもしれません。
細かく言うと明るい背景や白バックでの使用限定(黒バック・暗い背景用の記事は別にアップしました)です。あくまでもA4くらいまでの小さな印刷物やウェブカット用として使い、大きいカットとして使うときは黒締めしたりシーン用に計画的に撮ったものを使うようにしたいですね。
デザイナーからすると後処理で角版写真にするか切り抜くか、合成するかを後で検討できるのはとても助かるんですよ。ミラー反転で映ったボトルを画像合成のとき半調にしました。(中央の2カット)
メリットその2:ボトルのハイライトが上から下まで一直線に入る
メリットその2はボトルのハイライトが上から下まで一直線に入ることです。鏡のように映り込むので反射したハイライトがうまい具合に本来のハイライトとつながってくれます。
比較のために白いシートを敷いて撮りました(右)。このワインボトル、元もと下の部分に歪みがあって少しわかりにくいですが、ステンレス板のほうがハイライトがくっきり一直線に出ています。
メリットその3:透明瓶の中身に線が出にくい
ステンレス板は反射率が良く天板と透過光の境目の明暗差が出にくいので、透明なボトルの中身の部分に変な境界線が入りにくいということです。(ワインボトルの下のあたりをご覧ください)
メリットその4:初心者にやさしい
メリットその4は天板にボトルをセットするだけなので初心者にやさしいということ。切り抜き写真をちゃんと撮るときにはハイライトを瓶の下まで当てるのを求められることが多いのでボトルの大きさと同じかそれより小さめの円筒形の台座にセットすることになリます。
不安定なセッティングになるので慣れないうちは落として割れたりしないかちょっと気を使いますよね。その点この撮り方なら安心して作業できると思います。
背景が黒や暗い時に使う場合にはライティングを変えた方が良い
切り抜き合成などで、黒背景や暗めの背景で使う時は商品写真自体が明るく感じたり、輪郭部分に違和感が出ることがあると思います。そんな時は黒バックや暗いバックにあったライティングに変えた方がいいことが多いです。暗い背景用の撮り方の記事もアップしましたので、参考にしてみてください。
まとめ、基本は切り抜き写真と角版写真は別物!でも条件付きでアリ。
特に切り抜きで「黒締めしないの?」とツッコミの声が聞こえてきそうです。カエルも切り抜き用写真の指定で撮影を依頼されたときは黒ケントなどで縁に沿って境界を締めて切り抜き用の写真を撮っています。
仕事の種類によってやっつけるのは、できるだけ避けたいですが、予算や使い所、作業時間の有無によっては、こういうやり方もありかなと思います。
例えばカタログのラインナップで小さい切り抜きカットを大量に並べるとか、メニューで数十種類のワインを写真付きで紹介するとかみたいなときには、撮影の時期やカメラマンの違う写真を寄せ集めで使うよりは同じ条件で一気に撮った写真を並べたほうがトーンのそろった綺麗な見た目になりそうです。少なくともカエルはそう思います。