一口におもちゃを撮影すると言っても、単に物撮りで撮るのかシーン的に撮影するかで、話がだいぶ違ってきます。
販売サイトなどに出品するために白バックとか切り抜き写真用で撮影するのは撮り方の記事としては一つアリなんですが、単品の商品写真以外のイメージカットの記事くらいじゃないと面白味がないですよね。
おもちゃは、それぞれに世界観みたいなものを持っているので、シーンっぽい感じの撮影で、同じ背景で商品だけ差し替えて撮るというのも、ちょっと乱暴な気がします。
学生時代の先輩から借りてきた、ちょっとレトロなおもちゃ。
昨年末、20年ぶりくらいに学生時代の先輩と再会しました。近況報告で、カエルが写真のブログをやっているという話をしたら、先輩のKさんが趣味で集めている古いおもちゃを、何かの役に立つなら使っていいよという事になりました。写真のモチーフに良いかもと思ってありがたく、いくつか預かってきたと言うわけです。
昭和50年前後のレトロっぽいのから平成あたりのちょっと古い感じのを借りてきました。
そこまでは良かったんです。おもちゃだったら小さいし、LEDライト1灯でもイケそうくらいに思っていたんですが…。いざ、預かったおもちゃを目の前にすると、おもちゃたちが何か訴えかけて来てるような感じがして、ただ白背景やテーブルに乗せて無難な背景で撮るとか、外に持ち出して風景バックにノープランで撮影するだけじゃ面白くない気がしてきました。ちなみに最近、屋外の撮影で“ぬい撮り”といって、ぬいぐるみを外で撮って楽しむブームがあるそうで、そういう人たちも、ぬいぐるみがカワイく見えるように、いろいろと工夫しているはずです。
今回はゴジラ、とりあえず普通に白背景で撮ってみる。
今回はゴジラを撮ってみることにします。とりあえず白い背景紙を使って、LEDライトに大きめのソフトボックスを付けて撮りました。白いパネルをレフ板にして影を起こして(明るくして)います。多分皆さんもよくやる普通の商品撮影です。
出来上がった写真がこちら。ヤフオクやメルカリなどの出品用などに使えそうな写真です。ソフトボックスを使った大きめの、やわらかい光源なので光もよく回り、影もきつくなくて見やすく撮れていると思います。
ただ、このゴジラは撮影ライティングの記事用に借りてきたものなので、これを見せて「撮れましたよ、記事見てください」と言えるようなものじゃないです。
おもちゃには世界観がある。
今回、借りてきたおもちゃを改めて見て思ったは、玩具やフィギュアにはそれぞれにキャラクターや世界観があって、そのキャラクターを生かして、しっかり撮影するのは結構、神経を使う作業だなと感じました。
さすがに、イメージカットでゴジラとこのジョニーのライティングが全く同じということはないですよね。
手軽にかっこよく撮る方法はないか?
今回のモチーフはゴジラです。設定では体長が数十メートルある怪獣です。パースをつけて大きさを出したいので、できるだけ広角側のレンズを使って遠近感を強調し、できれば見上げるようなアングルで撮りたいところです。
さらにシリアスな感じを出したいので、光を全体的に回すというよりは、割と硬めの光で陰影を強調する感じが良さそうです。かと言って影がつぶれてディテールや輪郭がわかりにくくなるのも避けたいし…。
色々悩んだ結果、ストロボ1灯使って、前に何回かやった、黒抜き撮影(ライトペインティング)を試してみることにしました。
クリップオンストロボ1個とパソコンがあれば、試せるのでお手軽!
前回クリップオンストロボをオフカメラで使う記事をアップしたので、練習にもちょうど良さそうです。
セットは白背景の撮影のときよりシンプルになる。
暗いスモークのアクリル板の上にゴジラを置いて、色んな角度からストロボ光を当てていきます。ストロボを生で当てると陰影がきつくなりすぎる気がしたので、トレーシングペーパーを1枚、間にはさみ、少しだけ光が拡散するようにました。
今回はストロボの光量は落とし気味でやってみます。というのも黒抜き撮影は後でパソコン上でレイヤー合成するので、多少光量が足りなくても同じレイヤーをコピーして重ねると暗い部分を明るくできます。
このへんはパソコンで後処理するメリットです。何度か試してみて学びました。
トレペとストロボを移動させて、数カット別々に撮っていく。
数カット、ストロボを移動して撮影しました。ダークな感じに仕上げたかったのでサイドよりやや奥気味の位置からのライトをメインにして、正面付近から当てる光は抑え気味で使う予定です。
もう少し強めに当てても良かったかも知れませんが、これでも十分使えるはず。
今回はフラッシュトリガーを使って無線で発光させました。無線のトリガーがなくても、部屋が暗ければシャッタースピードを長めにしてストロボをテスト発光させても同じことができると思います。
黒抜き撮影では移動して光を当てた回数が、例えば5箇所だとすると5個のストロボを使った多灯撮影と同様の効果ということになります。
しかもストロボを同時に発光して撮影したときに気になるフラッシュ同士の交錯や乱反射、映り込みなどを、必要に応じて黒く塗りつぶして消すことができるので意外と便利です。
これは全体の色出し用のカットです。
これも色出し用、逆サイドからも押さえておく。
尻尾や背中のエッジを出すためのカット。
背景用のカット、後でパソコン上で色をつけます。
撮影したカットをレイヤーにまとめて合成する
撮影したカットをレイヤーにして比較明合成してから、明るさなどを調整して完成です。作業工程は以前紹介したバイクを黒抜き撮影(ライトペインティング)したときと同様です。バイクのときは懐中電灯を使いましたが、ストロボを使っても作業的には変わりません。
調整するとまだまだ明るくできますが、だんだんとおもちゃ感が出てきます。
この撮り方だと、後処理で好みの明るさや色味に調整できます。レイヤー構造なのでストロボ5灯で一発撮りよりも自由度は高いと思います。正解はないですが、時間をかけて、調整すれば上の2つの写真より良い感じになる可能性は大です。
さらに凝りたければ、ジオラマか背景合成か。
今回はシンプルに小道具なしのライティングだけで撮影しました。もっと凝りたければ、やはりジオラマを作ると良いんだろうなと思います。
怪獣が登場するシーンだと、火山とか岩場みたいなものとか、破壊された街っぽい背景を廃棄物(燃えないゴミみたいな)ものを塗装して使っても面白いかも知れません。
後はネットのフリー素材などで、それっぽい写真やイラストを見つけて合成なんていうのもアリだと思います。スモークも良いかも。
まとめ
おもちゃやフィギュアの撮影は奥が深いですね。ジオラマなどシーンに凝れば、面白いモチーフだと思います。ただ、本気でやりだすと数日から数週間くらいかかってしまいそうです。
手軽にちょっとドラマチックな撮影をするのには、今回の黒抜き撮影は使えると思いました。
外の風景で、もう少し簡単で効果的な撮影ができると良いんですが、今のところ良いアイデアが浮かんでこないんですよね。