カメラを買ったばかりの初心者だと照明機材を持っていたとしても、クリップオンストロボ1個だけという人は多いんじゃないでしょうか。
プロカメラマンが照明を使って物撮り(商品撮影)をするときは、被写体にもよりますが、少なくとも2~3灯のストロボ(または定常光)と照明用のアクセサリー類を駆使して、セッティングすると思います。
技術の差はもちろんですが、機材的にも太刀打ちできない感じですよね。
今回はそれでも、あきらめずにストロボ1本だけでプロの商品撮影に近づけるにはどうしたら良いか考えてみました。
ややこしい記事になりそうな気がしますが、
しばらくお付き合いくださいm(_ _)m。
先に言っておくと…。
プロっぽく撮れそうですが、撮り方はあまり面白くないかも知れません。はっきり言って地味です。でも個人的には、かなりイケてる写真が撮れるんじゃないかと思ってます。
ちょっと大袈裟かも知れませんが、専業のプロカメラマンからもツッコミが入らないレベルが目標です。
用意するもの
用意するものは、できるだけすぐに手に入りそうなものにしたいと思います。
マニュアルのみの安いクリップオンストロボとフラッシュトリガー(必須)、ソフトボックス、障子紙を巻きつけたディフューザー、商品を載せる台には銀色のカッティングシート(アルミホイルでも可)を貼りました。
それにソフトボックスの光の形を変えるための自作のストリップマスクと黒いボードです。ストリップマスクのDIYについては前回の記事を参考にしてみてください。
ストロボとトリガーは必須
今回の記事はクリップオンストロボとフラッシュトリガーを使うのが前提になります。ここで使うフラッシュトリガーとは、普段カメラのアクセサリーシューに付けて使うストロボをカメラから離して自由な場所から発光できるようにするアイテムのことです。
今日紹介する撮影は、LEDライトでもできなくはないですが、ライトは、かなり明るいものを使わないと絞ってピントを全体に合わせにくいし、ライトの本体もそれなりに大きくなるので撮影の難易度がかなり上がると思います。
クリップオンストロボだと小さいので取り回しも楽で、瞬間的な光量が大きいので、室内が多少明るくても大丈夫です。ストロボとトリガーは1セット持っておくと、写真のクオリティーも格段に上がるのでオススメ。
フラッシュトリガーは馴染みのない方もいらっしゃると思いますが、ストロボとフラッシュトリガーの組み合わせ、持っておいて損はないと思う。
プロがライトを複数使う場合、どこに当てるのか考えてみる。
雑な絵ですみません。あとで描きなおすかも。
プロカメラマンが複数のライトを使ってボトルを撮影する場合、どの位置から照明を当てるのか、おさらいしてみます。
撮り方は色々あると思いますが、考えられるライティングを書き出すと、まずボトル全体に当てるトップライト。これはボトル全体の形を出すのに使います。ラベルにも均一な光が当たるようにしたいところ。
次にボトル左側から当てるハイライト用の光、これはボトルの立体感や丸みを強調するための光です。
ラベルの右側から当てるライトは光量不足のときに使用、トップライトで十分ならば使用しなくても良いかも。
バックライトは透明瓶の色や中身の色出しに使います。最後に必要に応じて左右からのエッジライト。これは使わない場合もあり。
以上、のようなライトが考えられます。必ずしもすべてのライトを当てるわけではないですが、これだけでも全部、同時に当てたとして6灯のストロボやLEDライトなどが必要になります。
プロカメラマンによる商品撮影の解説などを見ていると被写体によっては一箇所のライティングに更に複数のライトを使ったりするみたいです。
カエルもストロボはモノブロックを4灯、クリップオンもいくつか持ってはいますが、出力の高いストロボまで出てくると、これはさすがにムリというライティングも紹介されていたりします。
プロは機材へのお金のかけ方が違います。とはいえ、初心者でも再現できそうな撮影もかなりあります。無理っぽいのは、たぶん数百万越え?。
今回は前にも何度かやっている、ライトペインティングの手順で撮影していきます。
またボトルって?でもボトルでうまくいったら大抵のものは撮れそうだと思いませんか?
セッティングはシンプルです。ストロボは1個だけで良いのですがクリップオンストロボの1灯ライティング、1発撮りということではありません。
このブログでは何度も登場しているライトペインティング(黒抜き)撮影のやり方で撮ろうと思います。
要するに前の章で説明した6灯のストロボ多灯ライティングを1灯ずつ6つのカットに分けて撮ったあとPhotoshopでレイヤー合成して仕上げようと言うわけです。
当然1灯ずつ撮っていくのでトレペ、ストロボ、ソフトボックスはそれぞれ1個ずつあれば足ります。
あとはボトルの回りを移動しながら、それぞれのライト用のセッティングで6カット撮影します。
過去に懐中電灯やLEDライトで何度かやっているのでそれなりの仕上がりになるだろうとは思いますが、あくまで実験なので、プロ並のクオリティーまで、もっていけるかはちょっとわからないです。
それぞれのカットを撮影していく
左からのハイライト
普段ボトルを多灯撮影するのと同じくトレペ(障子紙)越しにソフトボックスを使ってボトル左側にハイライト用のライトを当てます(縦位置で3分の1程度マスクしてます。)。露出は露出計で測り、若干アンダー気味に撮ることにしました(SS:1/250、F11、ISO:100、ストロボ出力1/8)。これは、万が一暗いときには、Photoshopでレイヤーを増やせばある程度明るく調整できるからです。
狭い部屋でやるときは背景を黒布や黒いボードなどで落としたほうが良い。ストロボ以外の光(環境光)を拾わないように注意します。これ大事。
トップライト
やや手前からトップライトを当てると必ずボトルに光源が映り込むので変な所が光らないように注意します。ソフトボックスのディフューザーはマスクを外して普通に撮りました。
商品を載せる台を銀色のレフみたいにしたので、弱いライトでも、ラベルには割とフラットに光が回ってる感じです。
バックからの透過光
バックからの透過光はちょっと小細工してみました。黒いボードをふた回りほど小さいボトル型にくり抜き、ソフトボックスに貼り付けて撮影しました。
これは余計な強い光がボトルの縁に回り込まないようにするためです。果たして効果はあるのか?
くり抜く形は細長い四角形や楕円とかでもよかったかも知れません
ボトルのシルエットにくり抜いた結果、光はぼんやりボトルの形にはなってるようです。ある程度ボトルの縁に回り込む光は抑えられています。とりあえず成功と言って良いかも。障子紙のディフューザーは紙にムラがあるようで。瓶に薄っすらとマダラ模様がでてしまいました。ここはユポや、乳白のアクリ板を使うべきでした。
ラベル右側に当てるライト
このカット、使うかどうかわかりませんが、とりあえず撮っておきました。ボトル部分やキャップのハイライトは合成してみて、うるさかったら黒く塗りつぶしても良いかも知れません。
左右のエッジライト
ソフトボックスは最初のハイライトカットより更に細長くマスクしました。
ボトルの両サイドの縁に当てるエッジライトです。これは白バックで使うときは必要ないカットです。黒バックや暗いバックで使いたいときはボトルの輪郭がはっきりするので有効だと思います。
左からのライト
右からのライト
個別に撮影した6カットをLightroomまたはPhotoshopでレイヤー化します。
ここからはパソコン上での合成作業になります。個別に撮影した6カットをLightroomまたはPhotoshopを使ってレイヤー化します」。
Lightroomの場合レイヤーにしたい写真を複数選択後、右クリック→他のツールで編集→Photoshopでレイヤーとして開く。
Photoshopの場合はファイル→スクリプト→ファイルをレイヤーとして読み込み、でレイヤー化できます。
画像が微妙にずれていることがあるので、そのときは一番下のレイヤーを基準にして下から一段ずつ可視化して位置調整すると良いです。
レイヤーにまとめた画像がこれ
すべてのレイヤーを通常モードから比較明に変更すると個別に撮影したカットが透過して6灯の一発撮り写真のようになります。
ただ、ここで気になることが…。ボトルに付けたハイライトがうまく表現されていません。たぶんバックライトのほうが明るいのが原因です。
レイヤー合成すると特定のレイヤーが暗すぎたり、逆にドギツく見えたりするときがあると思います。
そういう場合は各レイヤーの透明度を調節したり明るくしたい場合は該当レイヤーをコピーして更に比較明合成からスクリーンなど、その他のモードで合成して、明るさや色のバランスをとっていきます。後は試行錯誤しつつ仕上げていきます。
白バックで使えるような画に調整する
ハイライトのレイヤーを比較明からスクリーンに変更して、さらにコピーしてもう一つレイヤーを追加してみました。ボトルの左側に白いハイライトが現れ、商品写真っぽくなってきました。さらに左右のエッジライトをオフにして白ヌキ写真でも使えるように変更。
レイヤー構造にしておくと。後で自由に外したり付け替えたりできるので便利
黒バックで使えるような画に調整する
ちょっと悩みましたが、黒い背景であまり浮いて見えないように調整してみました。どうだろう…、ちょっとやりすぎかな。エッジライトは左だけにしてみました。ラベル右がちょっとですが、輪郭はある程度感じられると思います。気に入らなければ、納得行くまで調整できます。
切り抜いて確認
通常の切り抜き写真のような感じに仕上げました。黒バックの写真より、やや明るめにすると軽快な感じになります。
障子紙ディフューザーのムラがイタイです。キャップも少し落としたほうがよかった。
エッジライト用のレイヤーを使うことで黒バックにくっきりと浮かび上がるボトルの表現ができました。ラベルのシワや水面に気泡ができてたり、いくつか突っ込みどころはありますが、クリップオンストロボ1本で撮った写真としては上出来じゃないでしょうか。方向性としては良いと思いますが、写真としてはこのままでは、商品になりきれてないです。
カエルはこういう、うっかりミスがよくあります。みなさんはどうですか?
この撮影のメリット、デメリット
個人的にはこの撮影のやり方、メリットだらけで、かなりイケてると思うのですが、良いところもあればちょっと残念なところもあります。
メリット
まず第一のメリットは機材が圧倒的に少なくて済むところです。たった1個のストロボだけで贅沢な多灯撮影っぽく仕上がります。
ストロボ1灯のみなので、当然ですが色温度のミックスからくる色の濁りもなし。また、複数のディフューザーを同時に使わないので、乱反射や、無駄な映り込みができにくいメリットもあります。
さらにバラバラに撮影しているので各ライトの強弱の調整がパソコン上の後処理でできてしまいます。ライトの色味なども各レイヤーで変えられるのも良いところです。
カメラや照明は高額なので一気に機材を揃えるのは初心者にとってはハードルが高いと思います。カエルも機材は数年かけて少しずつ揃えていきました。
ある程度の機材が揃うまでは、こういった撮影を通してライトを複数使った撮影の勘をつかむのにも良いと思います。やり方によってはアートっぽい写真を撮れる可能性もあります。
デメリット
やはり一番残念なところは、撮影ライティングやってます感が圧倒的に薄いことですね。
撮影直後、確認用のモニターを見ても暗い中に、意味不明なライトに照らされた写真しか見えないのは、なんかつまらないのは事実です。
また一枚の写真を仕上げるのに、細かくカットを分けて撮らないといけないので、商品を入れ替えて、商品カットを量産するのには向いていません。
慣れないうちは、仕上がりの予想もやや難しいかも知れません。
まとめ
デジタルカメラが主流になってから、写真を撮る醍醐味がだんだん薄れてきてる気がします。
パソコンでの後処理もあたりまえになり、Photoshopなんて今やマストアイテムに近いです。
加えて生成AI と来てますからね。撮影を長くやっている方にとって、今回紹介した撮影は、あまり好きになれないという考えもあると思います。
カエルも半分はそんな気分です。ただ、表現の選択肢はいくつもあっていいとも一方で思っています。
最近、勉強不足+地方在住で情報が少ない事もあってプロの現場に疎くなってきていますが、撮影後の加工が前提になると、意外とこれに近い撮影は商用では増えてるんじゃないかとも思います。
写真だと思ってた画像が実はCGとか今では当たり前の時代です。
もしかすると写真をビジネスよりで見ている人や、たくさんの表現手段の一つと考えている人には、AIや変則的な撮影は受け入れやすいのかも知れません。ただ、自分はというと、生成AIに関しては実はあまり興味が持ててないので、時流に乗り遅れないかちょっと心配です^^;。
フラッシュトリガーを今買うなら、Nikon用だと下のX3Nが良いと思います。購入する時は、カメラメーカーによってタイプが違うので確認してください。