
油絵や美術に興味のある人なら、クロード・モネを始めとする印象派の画家が絵を描くとき、影の色を青や、青紫色で表現していたのはよく知っていると思います。
記事の案を練りながらGoogle Geminiと会話している時、面白い実験の話題になりました。
ホワイトバランスの話で、晴天時の影は青空の色がカブるので影の色が青っぽくなっているのを確かめると言うものです。
そこで印象派の影の色の話になったのですが、カメラの色温度設定と印象派の表現をからめて記事にするのは知りたがり屋の性分としては興味をそそります。
そこで実際に撮影して確かめてみようと思います。
モネが色温度を知っていたかについては、知らなかった可能性が大。

これはGeminiの情報ですが、記事タイトルの結論から言うと印象派が活躍していた頃、「ケルビン(K)という単位自体はありましたが、画家たちがそれを知っていて描いていたわけではありません」ということらしいです。
- 1848年: イギリスの物理学者ウィリアム・トムソン(後のケルビン卿)が、「絶対温度(ケルビン)」の概念を提唱しました。
- 1874年: 第1回印象派展が開催(モネたちが世に出た頃)。
- 1900年頃: マックス・プランクらが「黒体放射」の法則を解明し、「温度」と「光の色」の厳密な関係(色温度の科学的定義)が確立され始めました。
モネたちが「影は青い!」と描いていた頃、科学の世界では「温度と光の関係」はまだ研究途中だったか、少なくとも画家の耳に届くような一般常識ではありませんでした。
モネやルノワールは、晴天時の日陰の色温度は高いから影は青く見えると知っていて、影を青く描いていたわけではなく、それこそ『印象』と鋭い観察眼で、違いを発見して画に取り入れたということのようです。
人間は脳内で理解している固有色のバイアスがあるので、ついモチーフの色の明度や彩度が落ちただけと思いがちです。
それまで誰も気づかなかったというのは驚きですよね。今やこの手法はイラストや漫画などいろんなところで見かける定番技法になっています。
カメラのホワイトバランスと色温度の関係。
色温度 (ケルビン) と
光の色の関係
数値が高いほど光は青くなります
日中の日陰
青空の反射で青みがかる
★印象派の影の色
曇り
光が拡散し少し青白い
晴天 (日向)
太陽の光、基準の白
※数値は一般的な目安です。カメラメーカーや環境により多少異なります。

ケルビン値は季節や太陽の位置でだいぶ変わることがあります。
ここはカメラのホワイトバランス設定を軽く説明しておくとわかりやすいかも知れません。
カメラのホワイトバランス(色温度)設定に晴れや曇りマークなどのアイコンが付いているものと、ケルビン値で測るものがあると思います。
このアイコンと数値はリンクしていて。晴れマークだと約5500k、曇りだと約6500k、日中の日陰が約7500kくらいなので日光の当たっているところと日陰では2000k(ケルビン)も差があることになります。ケルビン値は高いほど青くなるので日陰の色は(固定色バイアスに耐えながら)注意してみるとだいぶ青く見えているはずです。これは青空の色が日陰だと特にカブりやすくなるのが原因です。
それでは実際に晴天時の影の色温度を実験して体験してみましょう。

一眼レフカメラのマニュアルモードで確認します。
晴れマーク(または約5500k)に合わせると日のあたっている場所の白いものは白く撮れるようになります。一眼レフのマニュアルにしていると、日陰の部分にある白いものは、かなり青っぽく撮れる予定です。
ここでなぜスマホを使わないのか、というとスマホはオートホワイトバランスで影の青みを消す可能性があるからです。これも合わせて検証します。


プリセットの☀️晴マークよりだいぶ低い4700k。これは冬が近く太陽の位置が低めなのが原因です。


影の色がしっかりと青紫色になってますね。


こちらはiPhoneの画像。彩度が若干上がりましたが、影の色は補正されずに青紫のままでした。
太陽光での撮影だと、デジカメもiPhoneも色補正にはあまり差はないみたいです。
スタジオ撮影であまり金レフを使わない理由

この検証で晴れた日中の光があたっている部分と日陰の色温度差が、とても大きいのがわかってもらえたと思います。
商品撮影やモデル撮影などでもの屋内では金レフを使うことってほとんどありませんよね。
金レフの主な使用目的は晴天時にできる青い影や青カブりを和らげるためにあることがよく分かると思います。
人はもともと微妙な色味は脳内で補完してしまうので、健康的に見える演出のほうが都合がいいということでしょう。
ムービーなどのカラーグレーディングにはあまり詳しくないので、断言できませんが、雰囲気作りの色補正など、後処理目的で金レフを使ったりすることもあるでしょう。
まとめ
影に限らず、僕らは世界を都合よく見ているのに気付かされますよね。
ちなみに同じく印象派のスーラは理論派だったらしく、点描と色彩の混合を科学的に探求していたそうです。対象的ですね。
普段はあんまり影の色なんて気にすることは無いと思いますが、画家は美の追求のために神経を研ぎ澄ませているんだなと、あらためて感心しました。
若い頃から今まで、印象派の絵って良いよななんて、雰囲気だけの好みで見ていたのですが、今回の色温度との関係に気づいて、作品より描いた人の探究心と情熱を感じました。
絵を鑑賞する視点が少し変わったかも知れません。

