フィルム包装された商品を撮るのって難しいと思いませんか?
時々ビニール袋や透明フィルムに入ったままの商品を撮ってほしい(最近白バック指定が多い)という依頼が来ることがあります。
後、真空パウチ、とか透明ケースに入った商品とかですね。
毎回なんとなく撮って納品しているんですが、自分でも撮り方の正解がイマイチわかってない気がしています。
今日は、カエルが何に気をつけて撮っているのか、自分自身で言語化しながら撮影してみようと思います。
撮影のポイントを、事前に考えてみた。
こういった撮影の場合は、だいたい白バックや、切り抜き写真で使いたいと言われることが多いです。
背景いかしの角版写真とかグラデーションペーパーとかだと、バックを暗めにしてビニールやフィルムの質感を出す方向でも撮影できそうですが、今回は切り抜き写真前提で考えます。
最近はECサイト(Amazonとか)白バック指定ということも多くなってますしね。
今日は白い背景紙で撮影する予定ですが、写真画像の中で一番明るくなる(ハイライト部分)のは多分、袋に当たったライトの反射光になると思います。
ということは白い背景紙の色は写真の画面上では、ごく薄いグレーになっている必要があります。加えて切り抜くためには透明ビニール袋の輪郭もある程度、見えていなければいけません。
内容物やラベルなどが見えにくくなるので、出来るだけ正面の中央あたりにハイライトを作らないとか。注意点としてはこんな感じだと思います。
白飛び気味のハイライトが少しはないと、フィルムやビニールの質感が出しにくいと思う。
用意するもの
近所のスーパーで被写体さがし。裏まで透明のパッケージって意外と少なかったです。今日は左上の袋入スプーンを撮ります。
今回はLEDライト2灯使ってライティングします。白い背景紙とトレペ(ユポ)のディフューザー、後は商品を少しだけ浮かせて撮りたいので、台座用にアクリルの角ブロックとキューブ型のフェイクアイスを用意しました。アクリルブロックがなければ透明なコップなどでもいいです。これは商品の下の台が透けて見えたり、影が目立たないようにするため。
撮影用の背景紙は前回の記事と同様、ガラステーブルの上にセットします。
商品をカメラと正対させる
商品をそのまま置いて撮ると真俯瞰の撮影になって、カメラのセッティングが面倒になります。
そこでアクリルブロックを使って商品少しだけ浮かせて斜めにセットします。
これでカメラは斜俯瞰のセットになるので撮影も楽になります。
裏側をセロハンテープなどで適当に留めます。
メインのライトは正面から打たない
まずは、LEDライト1灯だけで撮影してみます。
ライトはサイド気味から当てるようにします。フィルムやビニールはライトを正面から当てると、きついハイライトが商品の正面にできてしまうからです。
ハイライトの白が、パッケージの中身や商品名などの印刷文字といった大事な部分にかかると、商品写真としてはNGなので気をつけます。
とりあえず、撮れた写真を見てみる
撮影した写真を確認してみます。露出計で測った適正に近い画像ですが、透明に透けているフィルムの部分のグレーがちょっと濃いかも知れません。またパッケージ下の影もやや気になります。
切り抜いて白バックにしてみる。
フィルム部分のグレーが、濃いめで、やや汚く感じる
Photoshopで切り抜いて背景を白くしてみました。加えて画像も明るめに補正しました。
悪くはないのですが、フィルムの透けた部分がやや濃い目でなんとなく気になります。
さらに加工して明るくしても良いのですが、やり過ぎると全体が白飛びしたようになってしまい、思うようにうまく調整しにくいです。
今回はガラステーブルの上で撮影しているので、下からもう1灯足して背景をもう少し明るくてみることにします。
透過光のバックライトを追加して撮影する
分かりにくいかも知れませんが、背景紙に落ちる影が薄くなってます。
背景紙にPVCシートを使っているので、透過光はかんたんに仕込めます。バックライトで背景を真っ白にすると白バックで切り抜いたときに溶け込んでしまう心配があるので、様子を見ながらライトの強さを調整します。今回は3段階くらい明るさを変えたものを撮りました。
バックライトで影と背景を薄くした写真を切り抜き加工する
撮影したものを確認してみます。背景もフィルム部分もだいぶ明るくなりました。これなら、うまくいきそうな予感がします。
先ほどと同じようにPhotoshopで切り抜いて背景を白くしました。なかなか良い感じじゃないでしょうか。フィルムの質感を残しつつ清潔感のある画になったと思います。
後処理の補正なしで、ここまで撮れたら満足。
ガラス板を使っても良いかもしれない。
撮影を終えてから、ガラス板を斜めに置いてその上に商品をセットしたほうが楽なんじゃないかと気づきました。ということで、追加でこれも試してみます。こちらも先程と同様に、透過光で背景を明るくします。
商品差し替えも楽なので、このセッティングでも良さそうです。
一旦、セットをバラシてから撮ったので色みが変わってしまった。
ちょっと詰めの甘い写真になりましたが、大丈夫そうです。
一つ前の結果とほぼ変わらないです。
印刷用の原稿のときは注意が必要かも
ウェブで使うのであれば、これで満足いく感じになったと思いますが、印刷物用に使う場合ちょっと心配な部分もあります。
というのは印刷物の場合、網点10%以下の色を出すのがけっこう難しいからです。
モニター上では明るめのフィルムはうまく表現できていますが、紙の上では白っぽすぎるとインクがほとんど乗らない可能性があります。
印刷物で使う場合はその辺も考えて、若干アンダー気味のカットも押さえておいた方が良さそうです。
背景も白バックだけでなくグラフィック処理で、色付きやグラデーション背景にするなどを検討してもいいかも知れません。
印刷がデータではなく指定入稿(知らない人多いですよね)だった頃は、印刷屋さんにお願いして、きれいに仕上げてもらったりできたんですよね。今でも多少は融通がきくとは思いますが、職人的な方は、きっと減ってるんでしょうね。
まとめ。
お客さんには「正解がわからない」なんて言えませんが(いや、付き合いの長い人には言ってるかも…)、こういう撮影は意外と、難易度高いと思います。
アシスタントから始めたプロカメラマンだと師匠がやっている様子を見てきて、ノウハウを知っている方も多いのかもしれません。
しかし、必要にせまられてデジカメを使い始めたカエルみたいな人間は、自力で正解を見つけるしかないです。
というか、これが正解なのかも、実のところよくわかりませんが、バックライトを入れることで不満点はかなり改善したんじゃないかと思います。
こういう地味でも、基本的な撮り方は誰かに見せるための商品撮影では避けては通れません。メルカリなどで出品用の写真を撮ったり、個人でECサイトなどを運営しているカメラ初心者の方でも、結構気になっている人が多そうな気がします。何かの参考になれば幸いです。
PVC背景紙は透過光が使えるので今回のような撮影には便利です。