
照明や撮影のことについて勉強しようとすると、キーライト(メインライト・主光源)というワードが必ず登場すると思います。
特に「キーライト」という表現を使うと、フィルライトとバックライトが3点セットで説明されることが多いですね。
今日はこのライティングの基本と言われる3点ライティングの詳しい解説は一旦、置いといてメインとなるライト(主光源、キーライト)は、どういう意味を持つのか、カエルなりに考えてみたいと思います。
とはいえ言っていることの本質は解説本などと変わらないと思いますが、できるだけ直感的に理解しやすいように工夫してみました。
キーライト(主光源、メインライト)を検索して調べると?

キーライトの意味をネット検索で調べてみました。
→主光源として被写体を照らす光。屋外の撮影では太陽、スタジオ撮影では最も光量の大きいライトがキーライトにあたります。
キーライトは、映像や写真の雰囲気、立体感、質感を決定づける最も重要な光源。という回答でした。
簡単に要約すると「シーンの雰囲気を決定づける一番強い、支配的な光」ということですね。
このキーライトの本質的な意味を忠実に守って、実際にモチーフにライトを当てていきたいと思います。
正面からの直射光、報道写真のストロボのようなライティング。

キーライトのスタート地点は、正面からの直射光にしたいと思います。
これはシャッターチャンスを逃したくない、撮れ高優先の報道写真のフラッシュのようなライティングです。
撮れていればOKという本能むき出しといった感じでしょうか。逆に考えればこれ以上ライトを足す必要性がないとも言えます。
明確な狙いが無い限り、作品作りでこんなライティングはしないと思います。
私たちが普段使っているカメラの原点は記録や報道写真・ドキュメンタリー目的だったはずなので、こういう写真を撮りがちな理由の一つかも知れません。
一眼レフのストロボなんて、レンズのすぐ上に取り付けるようになってますしね。

ダメとは言いません。狙いがあればOK。
斜め前から当てるキーライト。
硬い光のライティング

このあたりから、いつもの見慣れたライティングに近づいてきたという感じですね。
硬めの光で被写体を撮ると立体感が強調されます。
反対側の影がきつすぎたり、被写体が背景と溶け込みやすいので、フィルライトやバックライトを足して、照明の基本と言われる3点ライティングの説明でよく使われています。

ライトの高さや位置を変えたバリエーションがあります。
柔らかい拡散光にすることで【光の演出】という考えが加わる。

ここで初めて光を演出するという意図が加わってきます。
柔らかな拡散光は多分スチールの人物撮影で一番使われているライティングだと思います。
屋外だと花曇り(薄曇り)の日には良い写真が撮れると聞いたことがある方もいると思います。
無難にきれいに撮れますよね。もちろん斜め45度からの照明だけではなく、高さや位置を変えたバリエーションがあります。
特に柔らかい拡散光は日本人が大好きなライティングだと思います。

洋書の写真と日本の写真雑誌などを見比べてみるとこのライティングの普及ぶりがわかります。
実は真正面からのキーライトもディフューズして柔らかめに当てる演出が加わればオシャレに変身する。

フラッシュの直射のようなライティングだと、単調で平坦になりがちな正面からのライトも面光源などの拡散光にすれば扱いやすくなります。
大きなソフトボックスの光源やリングライトなどで、光を回して影の出ない柔らかい雰囲気をだすために使われていますね。ファッション雑誌のビューティーフォトなどでよく見かける当て方です。
とにかく日本人はこの柔らかいディフューズ光が大好きです。これは日本の紙の文化、障子や提灯、行灯など和紙で拡散した光を何百年も使ってきたからではないかと密かに思っています。浮世絵の手法などにも共通点がありそうですね。
サイドからのキーライト
サイドからの硬めのキーライト

サイドからの硬めのキーライトも立体感が出やすいライティング、人物や物撮りでドラマティックな感じを出したいときに使う感じでしょうか。
これは前章の斜め前のライティングのバリエーションとして扱っても良かったかも知れません。人物だと、顔のほりの深さが強調されるので、どちらかというと男性向きです。

このへんまでが3点ライティングで説明しやすい当て方かも知れません。
サイドからの柔らかいキーライト

硬めのライトよりディフューズされているぶん柔らかい印象。レフやフィルライトで反対側の影を起こして撮ることが多いです。穏やかで、優しいイメージになるので女性の撮影にはこちらの方が向いている。
ボトルのブツ撮りで柔らかいサイドライト(ちょっと手前ですが)をキーライトに使っています。
半逆光(斜め後ろ)からのキーライト
半逆光(斜め後ろ)からの硬めのキーライト

被写体の斜め後ろから当てるキーライトです。このあたりから、照明の基本3点ライティングで説明するとややこしくなってきます。
ギリギリ反対側の斜め後ろからバックライトを当てると何とか説明できそうです。
このライティングはダークでシリアスな雰囲気が出しやすいので、サスペンス、推理モノ、ホラーなどの映画やドラマで頻繁に使われています。

Geminiが映画のフィルム・ノワールで多用されていると教えてくれました。
2年ほど前のブログ記事。怪獣を恐ろしげに撮りたいという意図があると自然に光量を落として影を強調したくなります。映画のライティングの知識がなくても、無意識に同じようなライティングを選んでしまうものです。
半逆光(斜め後ろ)の柔らかいキーライト

硬めのライトよりディフューズされているぶん柔らかい印象になります。
これもレフやフィルライトで反対側の影を起こして撮ることが多いです。
逆光気味でも柔らかい感じなので雑誌のモデルさんで撮ったりしてるのを見かけます。

バックライトがキーライトとかぶってきました。主光源の解釈で意見が分かれるかも。
トップからのキーライト
トップ(真上や、やや手前)からのキーライト

どちらかというと商品撮影でよく使われているキーライト。
人物のときはバタフライライティングと言って、鼻や首などの影をレフやフィルライトで起こして使うことが多い。
トップ奥(半逆光)からのキーライト

料理などの物撮りでよく使われています。
平たい被写体だとハイライト(照り)が出しやすいので美味しそうに見せる(シズル感を出す)のに便利なライティングです。
逆光なので透過光の効果でサラダなどのグリーンも色鮮やかに表現できます。
人物の場合は映画やドラマなどで使っているのを見かける感じだと思います。
スチールのポートレートだと微妙で例えば日光がバックライト、キーライトがストロボとも受け取れそう。
トップ奥(半逆光)の位置からライト1灯で撮った料理の写真です。
逆光のキーライト

解説本ではキーライトと呼ばず、単純に逆光表現とかシルエットと呼んでいるかも知れません。
ただキーライトがシーンを支配するライトということであれば、これもキーライト(主光源)と呼んで良いんじゃないかと思いますが、皆さんはどうですか?
人物ならば例えばレフで薄っすらと影を起こしたり、目の部分にだけキャッチライトを当てたりなどの演出もありでしょう。

未知との遭遇または、ダークヒーローの登場みたいな感じ。
下からのキーライト

よく言う、おばけライト。自然光でこの光は少ないので、人は違和感を感じると言われています。
結論、どこから当ててもキーライト(主光源)はキーライト。
たくさん例を出した割には当たり前の結論になってしまいました。
特に撮影を始めたばかりだとキーライト(主光源)を被写体の手前側からつい当てたくなってしまいます。
解説本や記事なども、わかりやすく説明するために、手前からの基本の当て方で紹介することが多いですよね。
キーライトというワードが、手前やサイドから当てるものということなら、メインライトとか主光源と言い換えるべきかもしれません。
確かに日常生活や通常の仕事ではそういうケースがほとんどだと思います。それもふまえて、
この記事で照明はどこから当てても構わないんだということが再確認してもらえたら、うれしいです。
特に画作りに凝った映画やドラマを注意して観ると、基本を外した面白いライティングを発見できるかも知れません。
まとめ
仕事柄、カメラマンや照明技師さんの仕事は今までにたくさん見てきているのですが、私は本業ではなく独学でカメラやライティングを学んでいるので、いざブログ記事を書く段になって、
キーライトってそもそもこの説明でいいの?間違ったこと書いたらまずいよね。と心配になり、カメラを始めた頃買った本やネット記事を見て確認することになりました。
おかげで最近、型にはまったライティングばかりやってることに気付かされ、もう少し遊び心を持つべきだなと改めて感じました。
もしかしたら、このブログ記事を読んでくださっている皆さんもいつの間にか「基本」や「常識」という型にはまっているかも知れません。
でも大丈夫!表現に正解も不正解もありません。特に上達目的や趣味ならば、色々試して楽しむのが一番ですね。